みなさんも最近「家族信託」という言葉を耳にする機会が増えてきているのではないでしょうか?
とてつもないスピードで超高齢化が進む日本において、家族信託は注目を集めています。
その理由は、超高齢化の波が押し寄せるのと同時に、認知症を発症した場合の資産承継対策に注目が集まっているからです。
(こちらもご参照ください)
↓
※高齢不動産オーナーの認知症リスク〜家族信託契約で資産を守る〜
※もしも認知症になったら……預金が引き出せない?〜認知症対策の家族信託契約〜
1.家族信託契約が注目されている理由
近年、家族信託が注目されているその理由……
それは認知症発症した場合の「資産凍結対策」ができる点です。
高齢の父親が認知症になった場合、その所有する不動産の建て替えや売買ができなくなるといった状況が起こります。
65歳以上の日本人の10パーセント近くが認知症というデータもあります。
今後、日本では「家族信託契約」は高齢の不動産オーナーにとって不可欠の存在になるでしょう。
2.不動産所有者の資産凍結への対応
高齢になった父親が賃貸不動産を所有し、マンションやアパートの賃貸経営を行っている場合を考えてみましょう。
父親も、ゆくゆくは、不動産の管理を子どもに任せたいと考えていますが、家賃収入は父親の生活の糧なので、家賃収入は今後も受け取り続けたいと考えていたとします。
こうしたケースでは、父親が元気なうちに「家族信託契約」を締結し、不動産の賃貸管理は子どもに任せ、賃貸不動産からの家賃収入は、従前の通り父親が受け取るという方法があります。
このケースでは、家族信託契約を締結すると「信託財産」はアパートやマンションなどの不動産です。
そして、高齢の父親が「委託者」兼「受益者」。
賃貸不動産を管理する子どもが「受託者」になります。
家族信託契約の内容に従い、アパートやマンションから生み出される賃貸収入は、以前と変わらず、父親が受け取ります。
受託者となった子どもには、その不動産の管理のみを任せることができるのです。
また、家族信託では、所有する不動産が複数ある場合には、家族信託契約の条項で定めれば最終的に
「アパートは長女に承継させる」
「マンションは長男に承継させる」
というように、委託者の意志により、承継先を指定することができます。
3.家族信託契約の手続き
不動産を信託財産とする場合の手続きは、まず、信託契約書を公正証書で作成します。
その契約書に基づき、委託者である父親所有の不動産を所有権移転・信託登記をし、受託者名義とします。
(所有権移転と信託の登記がなされますが、決して受託者所有の財産になるわけではありません。この場合「誰のものでもない財産」などという言われ方をします)
このように、家族信託契約を結んでおくことで、高齢の父親が、元気な間だけでなく、もしも認知症や脳梗塞を発症し、意思能力が低下する状況となった場合でも、信託財産である不動産を受託者名義にしているので、不動産の賃貸契約や、不動産の売買、承継を円滑に行うことができるのです。
4.もしも家族信託契約がなければ……
では、もしも家族信託契約をしていない高齢の不動産オーナーである父親の意思能力が低下してしまった場合はどうなるのでしょうか。
まず、意思能力が低下したと診断された父親の資産は凍結されます。
介護費用や介護施設入居のために、不動産を売却したいと考えても、父親名義の不動産を家族が勝手に売却することはできません。
後見人選任の申し立てが必要となりますし、不動産の売却には裁判所の許可が必要です。
手続きも必要ですし、時間もかかってしまいます。
超高齢化社会を突き進む日本で、認知症の発症は、誰にでも可能性があります。
高齢の不動産オーナーさんは、早い段階で、資産承継の対策をはじめることが必須なのです。
そして、家族信託契約が結べるタイミングが限られていることを忘れてはいけません。
判断能力がしっかりしている、元気なうちにのみ可能です。認知症になってからで間に合わないのです。