東京中央区勝どきの行政書士 岡田愛香です。

外国人旅行者の増加や東京オリンピック開催を目の前にし、人手不足解消問題、待ったなし!の状況である宿泊業界。

今回は、宿泊業の人手不足の問題に注目したいと思います。

宿泊業界は人手不足

2020年の東京オリンピックに向け、新規オープンのホテルが増加し新たなホテルの建設や進むなか、人手不足という状況が変わらない宿泊業界。

その人手不足の原因として挙げられるのが、賃金の低さと、その労働環境による離職率の高さ

なぜ離職率が高くなってしまうのでしょう。その原因について検討する前に、近年の新入社員が、働く目的をどのように考えているかご紹介します。

新入社員は”楽しい生活をしたい”

日本生産性本部「働くことの意識」調査によると、「楽しい生活をしたい」と考えて働く新入社員の割合は41.7%となっており「経済的に豊かになる」ことや「自分の能力をためす」(12.4%)よりも多くなっています。

つまり、プライベートを大切にしながら働きたいと考える人が増えているということを示しています。

「働きがい」など仕事をすることで得られる精神的な充足よりも、給与や福利厚生等の「条件」をより重視する傾向が強くなってきているとも言えます。

希望する条件とマッチしなかった場合

「無理をしてまで働きたくない」

「楽しくないなら仕事したくない」

という考えから、離職を選択することは、彼らにとってやむを得ない選択と言えるのです。

 

離職率が高い宿泊業

宿泊業の離職率の高さは人手不足の原因のひとつと考えられます。

近年「新卒者の3人に1人は3年以内に離職する」と言われています。

厚生労働省の調査によると、この新卒者の離職率を宿泊業・飲食サービス業に限定すると、大卒者では53.2%、高卒者に関しては66.2%か3年以内に離職しています。

他業界よりも、新卒採用した人材が辞めてしまう割合が高いのです。

では、せっかく採用した人材の離職を防ぐ対策はあるのでしょうか。

厚生労働省の調査によると、離職率の高さの原因と考えられているのが、賃金の低さ労働環境です。

宿泊業の平均年収は他業界より低い傾向

宿泊・飲食業における20 歳~24 歳の平均年収は187万円で、離職率の低い業界、例えば、金融・保険業(223 万円)、教育・学習支援業(219 万円)の平均年収と比べると低くなっています。

また、宿泊業・飲食サービス業は、シフト制で週休1日制をとっている企業も多くあり、休みが取りにくい労働環境となっています。休暇を取得しにくいことで、仕事とプライベートの両立が難しくなり、結果として、離職せざるを得ない状況となり得るのです。

求職者にとって、宿泊業は「早朝・深夜勤務が求められるにもかかわらず、給与水準が低い」とのイメージがあり、求職者から敬遠されてしまう現状があると考えられます。

(参考 日本銀行甲府支店県内宿泊業界における人手不足への対応―インバウンド需要の更なる拡大を展望して―)

対策はあるの?

離職率の高さへの対応として考えられるのが「多様な働き方」の選択ができる体制を作っていくことだと言えます。

「隔週週休2 日制から完全週休 2 日制への移行」により対応する宿泊業者もあります。

また、新たな人事制度及び給与制度を設け、宿泊客へのアンケートを行い、その満足度を給与の増減に反映させる対応をしている宿泊業者あります。

これらの対応が人材の定着に繋がり、離職率が下がることにより、さらにいい人材を獲得する好循環を生むことが期待されます。

また、外国人宿泊客へのスムーズな対応を目的として、外国人を積極的に活用する企業も増えています。

宿泊業における外国人の採用・活用人数は、2012年の調査では5.8人だったものが、2019年には21.0人と大幅に増加しています。

外国人観光客が多く利用するホテルや旅館の場合、外国語を用いたフロント業務や、外国人観光客担当でホテル内の施設案内業務などを担う外国人の採用が可能となる場合があります。

外国人材の採用は、増加する外国人宿泊者へのサービス提供や人手不足への対応策の一つとなると考えられます。

出典

※日本総研 「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」結果 2019

※日本銀行甲府支店「県内宿泊業界における人手不足への対応―インバウンド需要の更なる拡大を展望して―」2019

※厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」

※株式会社リクルートライフスタイル「観光業界における人材課題 ~日本の経済発展のために求められること~」

※厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」